京極夏彦

 京極夏彦という作家の作品に嵌っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E6%A5%B5%E5%A4%8F%E5%BD%A6
怪談を話の軸にして事件を解決に導く(「仕掛け」とか「憑物落とし」と作中では呼んでいます。)タイプの時代探偵小説を得意としてる作家さん。
 こう書くと何だか胡散臭いファンタジー作家のようだけれど、筋書きは至って現実的で論理的。超自然的な現象のように思わせておいて、最後に種明かしがある、という構成になっています。
 代表的な作品には『巷説百物語』シリーズと『京極堂』シリーズがありますが、この二つのシリーズでは妖怪の事件への絡み方が大きく違います。
巷説百物語』シリーズは江戸時代が舞台なんですが、普通では八方丸く収めることができないような問題を、小股くぐり(今で言うペテン師)の「又市」を中心とした仲間が妖怪の仕業に見せかけて解決していくというストーリです。つまり、妖怪を事件解決のために利用するという筋。
それに対して『京極堂』シリーズは(全部読んだわけではないのだけれど)、戦後が舞台。妖怪の仕業のような難事件を論理的に解決していくというストーリーです。『金田一少年の事件簿』を複雑にしたような感じで、ここでの妖怪は利用するものではなく、解明する対象です。
個人的には前者のシリーズの方が好き。設定が江戸時代だから可能なわけですが、緻密な仕掛けで超常現象を演出し、それを妖怪の仕業と見せかけて難問を解決していくというストーリーが新しい。超常現象に見えるけど実は人間の仕業でした、という金田一系の推理小説や、本当に妖怪はいる、という前提のファンタジー小説のどちらでもなく、不思議な出来事を人々に納得させる方便としての妖怪の役割を前面に押しだした小説は今まで無かったのではないでしょうか。
京極さんの作品に共通する、不思議な出来事の理由付けとして妖怪が生み出された、という考え方はとても現実的で、彼の小説や妖怪に対する真摯な態度が滲み出ているように思います。実際のところ、すごく博学で整理整頓が大好きな、キング・オブ・A型な人のようです。(ホントにA型かは不明。)

それにしても、この人の本は長いんだ、これが。巷ではサイコロ本と呼ばれているらしいけど、まさにその通り。文庫本なのに立方体です。笑
ま、『巷説百物語』シリーズは短編に分かれているので、興味のある方はぜひ。多分、本屋で一話ぐらい立ち読みしても損はないかと思います。