数日空いてしまいましたが、続きを。

 音質が大して変わらなくても(もしくは区別できるだけの耳を持って無くても)高いイヤホンを買う理由として考えられるのは、「違いの分かる自分」像への欲求です。

 今まで音響といえばリビングで聞く高級プレーヤーやスピーカーのことでしたが、
・ギガ単位のデータを保存できるMP3プレーヤーの普及により、大量の音楽データの持ち運びが可能になったこと、
・極小HDをプレーヤーに内蔵させることにより、CD・MD時代のような記憶媒体の形状による制約がなくなり、プレーヤーのデザインが多様化、高度化したこと、
この2点により、音楽は完全に持ち歩くものになり、当然「持ち歩き方」も多様化してきます。

 「音楽は大量にMP3プレーヤーに入れて持ち運ぶもの」というパーセプション(認識)が社会に形成されると、「違いの分かる自分」像を求める人は、他と差をつけるために高価格の商品を買おうとします。数万円という手が届く範囲で、しかも人目につきやすい高価格のイヤホンはブームになるべくしてなった、と考えられます。

 では、その中でもどんな高価格イヤホンがヒットするのか。
「違いの分かる自分」像を求める人の多くは、そんな自分を人に見せたい、見た人には分かってもらいたいはずです。そのため、一見して他と違う、高そうなデザインの商品に手が伸びるはず。高価格イヤホンにとって、デザインは音質以上に重要な要素かもしれません。
 加えて、「そのイヤホンいいですね〜。」と言われた時に「これは、〜〜〜っていうメーカーの〜〜〜っていう素材を使った商品で、ジャズを聞くには最高のイヤホンなんだよ〜。」などというように薀蓄が語れることも、彼らにとって重要な要素でしょう。
 他と違う高そうなデザインとその裏にある薀蓄、この2点を揃えること、つまり、ミーハー心をいかに満足させる要素を用意できるかが、高価格帯イヤホンにとっての勝負所なのだと思います。